たまさか一日中オフの日、みゆきは店で仲のいい五反田イメクラ嬢を誘って街に遊びにきていた。カラオケボックスでみゆきが大塚愛の「さくらんぼ」を歌い上げると一斉に拍手とヤンヤヤンヤの大歓声が起こった。
「みゆき歌うまーい」
「ねえみゆき、今度は続けてあゆ歌ってよあゆ」
「えー、私はもう一曲愛ちゃん聞きたいなあ」
「イェーイ、アンコール、アンコール!」
「えへへ、みんなありがとう~。でも私はまた後でいいわ。次は雪緒ちゃん歌ってよ」
「え…?」
「だって雪緒ちゃんさっきからジュース飲むだけで全然歌ってないんだもん。1曲くらい歌ってもいいじゃない」
みゆきは雪緒と呼ばれた、ツインテールのおとなしい娘に笑いかけた。この人懐っこい笑顔と明るい性格のおかげでみゆきは1週間経たないうちに他のイメクラ嬢とすっかり仲良しになっていたのだった。
「そう言ってもらえるならお言葉に甘えて…」
雪緒はみゆきからリモコンとマイクを受け取って、曲を入力した。音楽が始まって雪緒が松田聖子の「Sweet Memories」を歌い始めてしばらくすると、座ってジュースを飲んでいたみゆきの隣にいたコギャル系の娘が低い声で話しかけてきた。
「ねえ、最近入った娘のこと聞いた?あの『えり』って源氏名の娘なんだけど…」
「えり?ひょっとしてこの間引退した緒方理奈に似てるあの…?」
「そうそう。あの娘さあ、入ってから2日目で今のみゆきと同じくらい稼いだらしいわよ。それでまだお客増えてるんだってさ」
「本当に?」
「本当よ。入って早々に一日中シフト入ってたんだし。それでさ、この間店長にそれとなく聞いてみたら新しいお客さんがほとんどみんな彼女のほうに流れてるって言うのよ!」
「はぇー」
話を聞いていた別のイメクラ嬢が驚きの声を上げた。
「はぇーなんて言って驚いてちゃ駄目よ。その後ネットで調べてみたけど、彼女、顔だけで指名取ってるらしいわ。体型は平均的でテクニシャンって訳でもないんだって。新人の分際で生意気だと思わない?私たち一生懸命お客さんに気持ち良くなってもらおうって思ってあれこれ考えてるのにさあ、アイドルに似てるってだけでポッと出の娘のほうがチヤホヤされてるなんて不条理よ」
そうまくし立てるイメクラ嬢の目の下は赤くなっていた。生中を何杯もお代わりして既に出来上がって、日頃の鬱憤が口を突いて出てきているようだ。
「ええっ、何それ。信じらんない」
「それって顔だけで売ってる歌の下手な歌手と一緒じゃないの」
「卑怯よねえ」
彼女の話を聞いていた嬢のほとんどが話に同調した。面白からぬ思いなのはみゆきも一緒である。それでもバラードでしっとりとしていた場の空気を淀ませたくないと思ってみゆきは黙っていた。それが気に入らなかったのか、酔っ払ったコギャル嬢の矛先がみゆきに向いた。
「みゆき、あんたもそう思うわよねぇ?」
みゆきが話の腰を折ると後が怖いと思って、
「うんうん、分かるわそれ」
と適当に返すと相手は話に共感してもらえたと思って勢いづく。
「やっぱりねえ。おかげでこっちはえりの煽りですっかり男日照りよ。あんたたち、友達として忠告するけどあの娘に常連客まで取られないように気をつけなさいよ。特にみゆき、あんたにはこのナイスバディがある。だからそれを武器にうまくつなぎ止めるのよ!」
嬢の手がみゆきの胸に伸び、その手がみゆきの乳房をグッと鷲掴みにした。
「きゃあん!」
みゆきがびっくりして叫んだ。他の娘も驚いてみゆきのほうを見た。
「もう、酔った勢いでさわらないでよ、エッチ」
みゆきが胸を庇いながら抗議するが、嬢は聞く耳を持たずに何杯目かの生中を飲んでいた。
「こうなりゃ今日は吐くまで飲んで騒いでやるわっ…(グイグイグイ)カーッ、泣かせる味じゃーん。ちょっと雪緒、次私にマイクちょうだいよ」
彼女は雪緒からマイクとリモコンを奪って曲を入力すると、立ち上がって呂律の回らない口でスージー・クアトロのロックを歌い始めた。ほとんど意味不明の喧騒の中で、誰かがぼそりと言った。
「その『えり』って娘、確かに危険よね…新しいお客さん呼べなかったら私たち干されちゃうもん。何とかしなきゃ…」
その言葉に反応して一同がうん、と頷いた。
みゆきはえり(理奈)に客が流れていっているという情報が気になって、ある時会社の同僚と来ているという客に訊いてみた。
「えりちゃん?俺は歌番組やドラマ見ないもんでアイドルには疎いからよく分からないけどさ、あいつはかなり緒方理奈に入れ込んでて本人に激似の姫が来たとあってすっかりお熱上げてるよ。んで延々と予約待ちしてやっと今日入れたって飛び上がって喜んでたよ。ネットや情報誌の読者コーナーでも大好評だったし」
客は情事の後の一服をくゆらせながら答えた。
「だからってあなたまで乗り換えるってことないわよね?」
みゆきは目を潤ませながら客に問い掛ける。
「いや、安心してよ。俺はみゆきちゃん一筋だからさ」
客はみゆきの頭を軽くポンポンと叩いて宥めた。
「本当に?浮気しちゃ嫌よ」
みゆきは目に涙を浮かべながら懇願した。
「ああ、もうすぐ給料出るからまた来るよ…あ、もうそろそろ時間だね。じゃあ」
客は身支度を整え、扉の前でみゆきをギュッと抱きしめて別れた。
「うん、きっと来てね。待ってるわ」
みゆきは客の耳に囁いた。固定客はある程度付いているとは言え一見の客や新しい客を他の娘に取られるのは悔しい。それはやはり容姿と技術を売りにして稼いでいるみゆきには面白くないことだった。
「アイドルが何よ…私だってこんなに美人なのに」
次の客の相手をするため、服を着替えに更衣室へ向かう道すがら、そんな思いがみゆきの胸の中で頭をもたげてきた。そして更衣室に入ると、まさに本人が理奈のステージ衣装を着込んでいる最中だった。
「………」
「………」
みゆきと理奈は目礼を交わしただけで一言も会話をすることなく、黙々と着替えていた。先に着替えたみゆきは理奈にわざと肩をぶつけて出て行った。理奈に困ったような顔をされても全く意に介することもなく。みゆきは部屋に入って、フリーで入ってきた初めての客の相手を迎えた。
「いらっしゃーい。コスプレ天国へようこそ。私みゆきっていいまーす。よろしくね」
セーラー服姿のみゆきは明るく挨拶したが、当の客は緊張でコチコチになったまま黙って戸口に立っていた。
「どうしたの?こっちへいらっしゃいよ」
「………いや、僕こういう店来るのって初めてだし、女の子とエッチなことするのも初めてだから勝手分からなくて……君とすることになったのもたまたまだし」
線の細い、どことなく神経質そうなその客は苦笑しながらゆっくりとみゆきのほうに歩み寄った。
「ふうん、あなた風俗って初めてなんだ?」
「ええ、ツレに男なら一度は行かないとって言われて強引に連れてこられてたんスよ」
客の男はそう言って、みゆきに顔を見られると恥ずかしそうにうつむいた。
「(彼、ショボくれた顔してるけど結構かわいい純情君じゃない)だからって別に恥ずかしがることないわよ。私が時間一杯付き合ってあげるから楽しみましょうよ。さ、裸になってシャワー浴びよっ」
「………」
男は黙って素直に服を脱いで、裸になるとみゆきが服を脱ぐ様をじっと見ていた。
「ちょ、ちょっと、そんなに見ないでよ。恥ずかしいじゃない」
セーラー服とスカートを脱いで下着姿になったみゆきが赤面した。
「え、でもこの後僕たち裸でエッチなことするんでしょ?」
「そ、それはそうだけど、脱ぐとこジーッて見られてると恥ずかしいのよ…」
みゆきはそう言ってくるりと客に背を向けて、ブラジャーとパンツを脱いで裸になるとシャワーの栓をひねった。お湯がちょうどいい温度になったところで客の体をシャワーで濡らし、ボディソープを塗っていく。みゆきの指が客の分身に触れ、皮を剥いた途端それはムクムクと大きくなった。
「あら、大きいのねあなたのおち○ちん」
みゆきは客に笑いかける。
「え、そうなの?」
下半身は素直に反応しても心の準備はまだできていないらしく、客はまだおどおどしていた。
「本当よぉ。今まで見てきた中で一番大きいわ、あなたのお○んちん」
みゆきは客の分身を泡にまみれた手で丁寧に洗った。
「ああっ」
感じた客がうめいて、分身がビクビクンと震えた。
「うふ、敏感なのね…でもまだイッちゃだめよ。お楽しみはこれからなんだから」
みゆきは壊れ物を扱うように、優しく客の分身を洗ってボディソープを洗い流した。
「それじゃあ私も体洗うから、あなたは体拭いてベッドで待ってて」
みゆきは客を待たせておいて、体を洗ってバスタオル姿で男の前に出てきた。
「お待たせ。じゃあ服着るからちょっと待っててね」
みゆきは下着を着て、セーラー服を身に付けると客の横に座った。
「さあ、今はあなたの好きにしていいわよ」
裸で股間を奮い立たせながら待っていた客は、胸をドキドキさせながらみゆきの乳房に触れた。
「みゆきちゃんって、おっぱい大きいんだ…」
感触を確かめるようにゆっくりとみゆきの乳房を揉む客の顔は照れで赤くなっていた。
「ふふ…マシュマロみたいに柔かいでしょ?」
みゆきは客に笑いかける。
「う、うん…僕なんかたまんなくなってきたよ、みゆきちゃん!」
ガバッ
みゆきは興奮した客に押し倒された。
「きゃっ!」
客は続け様にみゆきのセーラー服を捲り上げてブラジャーもずり上げた。みゆきの豊満な乳房がプルンと波打って飛び出す。
「わあ…これがみゆきちゃんのおっぱい……」
客はみゆきの上に乗って、豊かな乳房が自分の手に合わせて形を様々に変えるのを見ながら乳房を愛撫した。
「ん…ああ、上手いわ…もっと揉んで…あ、んん、ああっ」
みゆきの口からよがり声が漏れ出す。客は更にみゆきの乳首を口に含んで、チュッチュッと吸いたてる。
「ひゃうん、そこ、気持ちいい…もっと、あっ、してぇ……」
「みゆきちゃん、気持ちいい?」
「え、ええ…もっと、もっとおっぱい触ってもいいわ…」
「いいの…?じゃあ…」
客はみゆきの一言で、理性のタガが外れたようにワシワシとみゆきの乳房を揉みしだき、その頂にあるピンクの乳首に盛んにキスをした。
「ああ、いい、いいよぉ…私、おっぱいで…おっぱいで感じちゃうぅ!」
みゆきは快感に体を震わせながらキュートなよがり声を上げた。客の手がスカートのホックに伸びた。
「みゆきちゃん、こっちも取るよ」
言うなり客の手はスカートを取り、パンツも脱がせてみゆきは下半身裸にさせられた。
「もう、せっかちなんだから…」
客の目はみゆきの股間に注がれた。
「ああ、これが女の子の…」
股間をまじまじと見られて恥ずかしさに顔を赤くするみゆき。
「あん、そんなにじっと見ないでよ、恥ずかしい…」
みゆきがそう言っても、ブレーキの利かない客は即座にみゆきの股間に顔を埋めて秘処に口づけた。
「みゆきちゃんの、きれいなピンク色だね……僕、食べちゃいたいよ」
ピチャ…
客の舌が花蜜を湛えたみゆきの割れ目の奥にある花弁に触れた。秘密の花園に触れる舌の感触が心地いい。
「う、ううん、もっと…私のアソコ舐めてぇ…」
みゆきが言うと客の舌がみゆきの花弁をより激しく這い回った。
レリッ、クチュ、ヌチュチュ、ピチュ…
「ああ…甘酸っぱくておいしいよ、みゆきちゃんの愛液」
みゆきの秘処のビロードのような柔かい感触と愛液の味を、客は舌先で心ゆくまで味わった。
チュプッ、ピチャ、クチュチュ、ヌチャ…
「あん、凄い…あなた、クンニ上手なのね……私、感じて…あああっ」
みゆきは体中ゾクゾクする快感に翻弄されていた。
「も、もう僕我慢できない」
客は立ち上がって腰を突き出し、亀頭をみゆきの秘処に宛がった。
「ちょ、ちょっと、本番はやめ…うわぁん」
ズブブブッ
みゆきが制止する間もなく、客は分身をみゆきの中にねじ込んでいた。
「ううっ、す、凄く締まるよ、みゆきちゃんのアソコの中…」
客はみゆきとつながったまま膣壁の締め付けを感じて分身を抜こうとしない。
「んん、ほ、本番はダメなのに…抜い……あああっ」
みゆきが止めるのも聞かずに、客は夢中で腰をみゆきの股間に押し付けた。亀頭の先がみゆきのお腹の奥にコツンと当たった。ビクッとなるみゆき。
「あああ、そこ、いい、いいよぉ…駄目なのに…駄目なのに、凄…感じちゃ…ああん」
「みゆきちゃん、奥がいいの?」
「え、ちょっと、も…ああっ、激しくて…お腹、変になっちゃ…あああん」
チュクッ、ズブブブッ、クチュクチュ、ジュブブ…
客はみゆきが感じたと見るや激しく腰を振り始めた。熱く大きな男の分身にお腹をかき回されてみゆきはメロメロになっていた。
「あっ、熱くて、先っぽが、奥に当たって…気持ち、いいよぉ」
みゆきは涙を浮かべてシーツをつかみ、ヒイヒイ言いながら客の分身を感じていた。
ズブ、ジュブブ、グシュッ、ジュプ、グチュチュ、ジュブジュブ…
みゆきの秘処から愛液が溢れ出し、それにつれて分身の滑りが良くなって往復運動も激しくなる。
「ああ、私もうだめぇ…ど、どうかなっちゃうよぅ…あはあぁぁ」
「ううっ、ぼ、僕も…出ちゃう…」
みゆきがエクスタシーを感じると同時に、客の顔も射精寸前の違和感を感じて引きつっていた。
「ああ…外で、出して……中は…中は駄目よ……」
みゆきが息を喘がせながら言うと、客はヌルリと分身を抜いてみゆきの体に精液をぶちまけた。
ビュクン、ビュル、ドビュビュビュッ…
みゆきのヘア、お腹、乳房、そして顔にまで大量に放たれた精液が飛んだ。セックスの後の気怠い疲れの中でみゆきは思っていた。
「(ああ、こんな純情君に本気でイカされるなんて思ってもみなかったわ…)」
「え、入れちゃいけなかったの?」
プレイ後のシャワーを浴びながら客は驚いたように言った。
「そうよ。ソープじゃないんだから。ここでは私たちとお客さんはセックスしちゃいけないの。本当だったら罰金払って顔写真も晒されて出入り禁止になるんだから」
みゆきは少し怒ったように注意した。
「ごめん……」
客は素直にみゆきに頭を下げた。
「(あら、本当に済まなそうな顔してる…根は悪い人じゃなさそうねこの人)」
みゆきはそう考えて、店長に通報するのはやめておこうと思った。
「でも…僕みゆきちゃんのこと好きになったよ。いいおっぱいしてるし、気立ても優しいし。こんな僕でよかったらまた来ていいかな」
客がおずおずと訊ねてきた。
「いいわよ。お店のルール守ってくれるならね。でも…」
みゆきは一旦言葉を切って、悪戯っぽく笑うとこう続けた。
「本番のこと誰にも内緒にしてくれるなら、させてあげてもいいわよ」
「ええっ?じゃあ僕これから毎週でも通っちゃうよ。お金ならあるしさ」
客の顔がパッと明るくなった。
「本当に?…じゃあ、私も頑張ってお相手してあげるわ。でも絶対このことは内緒よ。ネットの掲示板に書き込むのもダメだからね」
「うん、秘密は守るよ。何なら指切りしたっていいよ」
「はい、ゆびきりげんまん嘘ついたら顔写真さーらす!」
みゆきと客は裸のままシャワー室で小指を絡ませ、秘密の約束をして別れた。客を送り出した後、みゆきの頭に1つの考えが浮かんだ。
「ひょっとしたら内緒でさせてあげるってのは使えるかもね…ルール違反はヤバいけど、強力なライバルに負けないためにはそれもありでしょ。ええ、ポッと出のえりなんかに負けてらんないもんね!」
みゆきは志を新たにして、控室に戻っていった。